vol.1015 「計画は執念で押し進める」

vol.1015 「計画は執念で押し進める」 2009.9.27
 代表取締役社長 藤麻 一三
 見える資本の価値から見えない資本への価値へと、世の中がシフトしつつある昨今。トップとしての行動哲学を強く求める経営者が増えてきました。今日まで、日本経済を支えてきたトップリーダーは数多く存在しますが、その中の一人に土光敏夫という人物がいます。
 氏は、大学卒業後に石川島重工業に入社。タービン製造技術を学ぶためにスイスへ留学し、当時、猛烈な働きぶりから「土光タービン」とあだ名をつけられました。昭和二十五年、経営危機にあった石川島重工業の社長に就任し、徹底した合理化で再建に成功。その後、東京芝浦電気の再建にも乗り出し、就任時の取締役会において「社員諸君にはこれから三倍働いてもらう。役員は十倍働け。俺はそれ以上に働く」という名言を残しました。
 以後、熱烈な努力と実績を買われ、経団連会長に就任。日本経済の安定化と行政改革に着手し、日本の経済界を牽引し続けたのです。反面、その立場の重さからは想像ができないほど、一般庶民よりも質素な生活をしていました。「メザシの土光さん」と呼ばれたごとく、まさに言行一致の経営者としても名高く、『経営の行動指針』(産業能率大学出版部)には、次のような氏の行動哲学が記載されています。
 いったん計画したものは、万難を排して完成させよ。その中で人間形成ができる。
 計画とは「将来の意思」である。将来への意思は、現在から飛躍し、無理があり、実現不可能にみえるものでなくてはならない。現在の延長線上にあり、合理的であり、実現可能な計画は、むしろ「予定」とよぶべきだろう。将来への意思としての計画は、本来困難なものなのだ。困難を受け入れ、困難にいどみ、困難に打ち勝つモチーフを、計画は自らのうちにもたねばならない。
 計画は、個々人にとっては、自己研鑽の場をつくる高い目標を掲げ、なにがなんでもやりぬく強烈な意思の力によって、群がる障害に耐え、隘路(あいろ)を乗り越える過程で、真の人間形成が行なわれる。そして艱難を自らに課し続ける人間のみが、不断の人間的成長を遂げる。
 計画とは、結局、自分のものであり、自分のためにある。そのことを各人が自覚したとき、計画は真の力を現わす。
 
他にも「やるべきことが決まったならば、執念をもってとことん押しつめよ。問題は能力の限界ではなく、執念の欠如である」とも語っています。
 企業においても個人でも、事を成すには必ず計画を立てます。立てた計画に対しては「必ずやり遂げる」という強い信念と果敢な努力を続けていくところに、組織も人も脱皮・成長します。苦しく辛い中にこそ、本物の成功の原理原則が潜んでいます。土光氏の言葉を糧とし、計画を完遂する喜びをかみしめたいものです。