vol.1120 クレームを乗り越えて
魚好人 蔵本 巌
久しぶりにお客様が魚好人に帰って来られました。
それは10年前の出来事です。魚好人は単品の料理とおまかせコースの2種類をお客様に提供しているお店です。その日の夜は団体のお客様の宴会がありました。お店が大変混雑していて、宴会の料理がなかなか出せませんでした。
初めのうちは、お客様も「今日は忙しそうだからゆっくりでいいよ。」と言っておられました。しかしそれでも料理は出ませんでした。1階が女性1人、2階が男性1人、それに調理2人のスタッフで営業していました。料理・ドリンクの注文、電話の応対、レジなどなど、店内はメチャクチャでした。そのうちにお客様からの催促が度々あり、最後には「もう帰る!」と言われていました。どうにか料理を出した後も「せっかくの宴会が台無し。今日は誕生日の人もいたのに!」と怒って帰られました。
翌日、私はその会社に行って改めてお詫びをしました。その会社の従業員さん3人が「新しいお店ができたから食べに行こう」と魚好人に来られ、「あそこのお店は何もかも全部うまい!」と社長に伝えられ、すぐに宴会の話がまとまったそうです。「みんなもすごく楽しみにしていた。それなのに残念でならない。」と言われました。私はただひたすらお詫びをしました。最後に社長は「もう終わったことだから…ただ他のお客様には同じ事をしたらダメだぞ!」と言われました。
それから10年ぶりにそのお客様が来られて宴会をして下さいました。その日は何事もなく、帰る際には「うまかったよ!」と言って帰られました。
私はその一言がメチャクチャ嬉しかったです。クレームというものはいつ起こるかわかりません。正直とても怖いです。でもそれを乗り切ったあと、私の心が少し強くなった気がします。
2014.9.15