vol.1134 「代金をいただくのを忘れて」

vol.1334 「代金をいただくのを忘れて」
魚好人 蔵本 巌

1月某日(土)、20時過ぎぐらいに2名のお客様が計算してくれと言われたので、私がレジ打ちしてお客様に金額をお知らせしました。すぐにお金がいただけると思い待っていましたが、雑談をされていたので、他のお客様のオーダーの仕事をして、そのお客様からお金をいただくのをすっかり忘れて、お帰ししてしまいました。次のお客様の精算の時、やっとその事に気が付きました。

私は真っ青になりました。予約伝票にお客様の電話番号が書いてあったのですぐに電話しました。私が「大変申し訳ないのですが飲食の代金をいただいていないと思うのですけど…」と切り出すと、お客様は大変ご立腹になられて、「お前バカにするのもいい加減にしろ!私が払わなくて帰る訳なかろうが!」と5分くらい捲くし立てられました。

私はどうして良いか分からず「申し訳ありません。私が間違っていたと思います。今の事は忘れて下さい。」と言いました。お客様は「いいや!これほどバカにされたことはない。今から支払いに行くから待っちょけ。お前のとこは、フジマグループじゃったのう~。」そう言葉を残されて電話を切られました。

私は“店にお客様が来られたらどうしようか…”そればかり気になって仕事が手につきませんでした。お客様の顔が見えたので、すぐに店の外に走りました。お客様と目が合うなり、お客様の方から「本当に払ってないのか?」「はい、そうです。もし私が間違っていたら、土下座して謝ります。」私がそう言うと「わしが払ってないんか?」と、しぶしぶ18,800円をお支払いいただきました。

私が一番悪かったのは、1組のお客様の精算を終えずに次のお客様の接客をしてしまった事、お客様が帰られる前によく確認しなかった事だと思いました。アンコウ鍋コースがすごく旨かったと言われて2回も来られたお客様でしたが、もう魚好人に来られる事はないと私は思っていました。

それから2日後、果物屋さんから魚好人宛てにフルーツが届きました。果物屋さんの奥様がよく知っているお客様だったらしく「お金を払わずに帰ってしまって迷惑かけたから、よく謝っておいてくれ!」と言われたそうです。私はすぐにお客様に電話して「大変申し訳ありません!私がもう少し早く気が付けば…」と丁寧にお詫びをしました。

私はクレームに関して電話で精一杯の言葉で対応したつもりでしたがものすごく怒らせてしまって反対に自分が縮こまる思いでした。言葉一つ一つの大事さがつくづく分かる一日でした。

2015.3.6