vol.1031 「こちらから」 2009.11.22
代表取締役社長 藤麻 一三
私はハガキを書くのが大好きです。初めて名刺を交わした人には、必ず、「御縁を賜り、ありがとうございます」とハガキを出します。たとえ、講演会でスピーチさせていただいた後で、何十人もの方たちと名刺交換しても、必ずお礼状を書いています。
ところが、ちょっと怠けていると、こちらがハガキを書く前に、先方からのお礼状が先に届くことがあります。「しまった」と思います。別に「どっちが早いか」という競争をしているわけではありません。でも、何だか、相手よりも自分の方が、感謝の気持ちが薄いような気がしてしまうのです。詩人・坂村真民さんの「坂村真民一日一言」(致知出版社・刊)を読んでいて、こんな詩に出会いました。
「こちらから」
こちらからあたまをさげる
こちらからあいさつをする
こちらから手を合わせる
こちらから詫びる
こちらから声をかける
すべてこちらからすれば
争いもなくなごやかにゆく
こちらからおーいと呼べば
あちらからもおーいと応え
赤ん坊が泣けばお母さんが飛んでくる
すべて自然も人間も
そうできているのだ
仏さまへも
こちらから近づいてゆこう
どんなにか喜ばれることだろう
ある幼稚園に園長先生を訪ねた時のことです。園に入って、下駄箱のところでスリッパに替えます。そこに、園児たちがやってきました。その中の一人の男の子が、元気な声で言いました。「こんにちは!」やられました。五歳の子の方が「向こうから」先に挨拶したのです。挨拶するなら、「こちらから」謝るのも、「こちらから」何をするにも、「こちらから」男の子の笑顔を思い出すたび、恥ずかしくなります。