フジマ

STORIES Vol.061~065

Vol.061

ガムシロップ失踪

のん太鮨山口店 清水 猛之

ある日曜日の事です。
忙しいピークタイム、私の握っている前に典型的なファミリーのお客様、おじいちゃん・おばあちゃん・お父さん・お母さん・お姉さん・弟さんの6名様が座られました。
その弟さんとチラチラ目が合っていたし、大トロや値段の高い鮨を沢山食べるので『僕は今日誕生日?』って聞くと『うぅん!』と笑いながら言ってくれて、なかなかのいい雰囲気でした。

お姉さんがソフトコーヒーゼリーを頼んだので、それを見ていた弟さんがお母さんに何か言っていました。するとお母さんが『あの~!お姉ちゃんが食べている物を、ソフトをのけてゼリーだけって出来ますかぁ~?』とお尋ねになりました。
『あ~やりましょう!!』と答え、『でも味が甘くないのでガムシロップを持って来ようネ。』と弟さんに言いました。弟さんも納得したようで待っておられましたが・・・、ホールがいつまでたっても持って来ない。
聞けばガムシロップが無いとの事。発注担当のTさんも閉口。
『すいません・・ガムシロップをちょっと切らしたみたいなんですよ・・・。』一瞬しらけムードが漂いました。

その時、弟さんが『じゃあ、少しだけのソフトでいぃ。』って言ってくれたので『僕っ!自分でソフト作ってみる?』と言葉をかけると『うん!』の返事。
“よっしゃぁ~”と思い、握り場を出てホールへ走りました。
『僕おいで!』」とテクテク歩いてソフトの機械の前へ。
『よぉ~し、ハイ!このグラス持って足でグッ~て踏んでごらん!』『出来たぁ!!』と弟さん。
お母さんやおばあちゃんも『よかったねぇ。』って言って下さり、もとの和やかな雰囲気に戻りました。
弟さんは嬉しそうにバイバイをして帰って行かれました。

私は接客が好きです。接客するには欠かせないのが「笑い」と考えています。
マニュアルに捕らわれていては、なかなか笑いも出ないしお客様の気持ちを掴む事は出来ないと思っています。しかしその基盤はキッチリしたマニュアルとも思います。
接客する側も心から笑える楽しさを、社員やみんなに私が実践して教えていきたいと考えています。

今回はガムシロップが無いという事故で起こりましたが、ガムシロップが無いという事に感謝しているわけでは有りません・・・ねぇ、Tさん。

Vol.062

少し早い特別な時間

               ~同じ気持ちで一丸となってすすむ姿は「美しい」

さざん亭徳山店 T.H

先日、いつもの様に開店準備をしていると、常連のK様が来店されました。
K様は『いつも病院の帰りにこちらのお料理を頂くのが楽しみで、心が安らぎます。』
と優しいお言葉を掛けて下さる心穏やかな方です。
でも、まだ10時を少し回ったばかり。
とりあえず11時が開店であることをお伝えし、ウェイティングの椅子でお待ちいただく事にしました。

しかし、寒い時だし“長時間お待ち頂くのはお気の毒だなぁ・・・”と思っていたところ、ナイスタイミングで石田副長が出社されました。素早く状況判断され、テキパキとした指示の下、無事にK様に、少し早い特別な時間を提供することができました。

以前、私は娘のバレーボール教室で、三田尻女子高校バレーボール部監督の河村氏のお話を聞いたことがあります。三田尻女子高校バレーボール部は、近い将来全日本を担うであろう、栗原・河村両選手も在籍する、常に全国トップレベルの超スーパースター軍団です。その監督の名セリフです。

『心・技・体はもちろん、選手・周りの環境・・・すべてそろわなければ・・・。1つでも欠けてしまうと○(マル)【すなわち和】にならない。丸いボールにならなければバレーは出来ない。』・・・と。
このセリフを今回のことで思い起こしました。

指示された石田副長、厨房の方達・・・その場に居合わせた者全員が同じ気持ちだったと思います。
何よりお客様に喜んでいただけたのがとても嬉しく、その日一日、なんだかいい気分で仕事に取り組めました。『こちらのお料理に癒されました。』という言葉がずっとこだましている感じでした。
同じ気持ちで一丸となって進む姿はきっと「美しい」と映るはずです。
そして何よりお客様にそれが伝わるよう、日々心の成長をし続ける自分でありたいと思いました。

Vol.063

不機嫌から笑顔へ

            ~クレームをどのように対処するかが大切

のん太鮨防府店 H.T

私達は娘夫婦と同居です。 皆んなお寿司大好き。週末にはよく行きます。
私達の好みをよく覚えていらっしゃってすぐ声をかけて下さる、とても感じのいい方がおられます。
ないとすぐ握って下さり私どもはファンです。いつも新鮮だし、また行こうと思っています。
【防府市Y.M様からのご意見はがき】

お褒めのお言葉をいただきました。
このお客様以外に、もう一人私によく話し掛けていただけるお客様がいらっしゃるのですが、どちらのお客様も最初は不機嫌な顔での会話から始まりました。

ある日のピーク時の事です。
年配のご夫婦で来店されたお客様の奥様が、突然私に『あなた、このお茶飲んでみて!いつもよりカルキ臭いでしょ?』と言われたので、私は臭いを嗅ぎながら少しだけ飲んでみました。
正直私は『少し臭うけど水道だしどうしようもないじゃん。』と思いました。
その後、お客様が『せっかく美味しいお鮨を食べても、お茶が美味しくなかったらお鮨も美味しく感じない。残念です。』と言われました。

私はその時、ふと山口店の清水店長の言葉を思い出しました。
私が山口店に勤務している時に、清水店長はいつも『クレームが起こってしまった事はもう仕方がない、その後どうお客様に対処するかが大切なんだ。』と。
そしてすぐホールの人に『イオン水を沸かしてあるポットの湯を湯呑みに入れて来て!』と頼み、お客様にそのお湯を出して差し上げました。
するとお客様は『これなら美味しい。でもここまでしてくれるなんて他の店ではあまり無いですよ。ありがとう。』と、最初の不機嫌そうな顔から一転して和やかな笑顔へと変わっていました。

今になって思うのですが、私が忙しさにかまけて何も対処してなかったら、そのお客様はその後来店されていたかどうかわかりません。今では、来店される度に私に声を掛けていただいています。つい先日も大阪と福岡のご兄弟を連れて来店され『このお兄さんが握ってくれると美味しいんよ。』と言っておられた時、私は照れくさい反面すごく嬉しい思いをしました。

今後もこのようなお客様が来店されると思います。
クレームから逃げたい気持ちは誰にもありますが、これからも最高の対処を身に付け、お客様に満足して帰っていただけるよう努力していきたいと思います。
何よりクレームを出さないようにするのが最優先ではありますが・・・。

Vol.064

お二人のとても大切な時間を過ごす場所

                            ~接客の重さ、奥深さ

さざん亭防府店 U.F

今まで、多くの人に出会い支えられ助けられ教えられてきましたが、接客という仕事について考えた時、思い起こす一組のお客様がいらっしゃいます。

昨年の夏頃から御夫婦で、初めは週に1~2回のご利用でしたが、それがほぼ毎日のように来店されるようになり、たまに他店へ行かれた話をされた時などは『どうでした?やっぱりうち(さざん亭)がいいでしょう?(笑)』などと押し付けとも思えるような会話をさせて頂いていました。

年が明けて、正月過ぎに御主人が一人でみえられ、奥様が亡くなられた事を告げられました。
私にとってもかなりのショックでした。以前、奥様が病気で先が長くない事、その為御主人は仕事もずっと休まれていて、一緒の時間を過ごされている事などを伺っていました。
そうです!!お二人にとってとても大切な時間を過ごす場所として、この店を選んでくださっていたのです。
とても嬉しく、ありがたく思うと同時に、接客という仕事の重さ、深さを改めて感じた時でもありました。
お二人の気持ちに応えられるような接客が出来ていたのだろうか?
本当に心地良い時間を過ごして頂けたのだろうか?

今も一人一人のお客様が、いろいろな想いを抱いて来店されます。
まだまだ、未熟で日々反省の私ですが、多くの方のおかげで今ある自分に感謝して、一人でも多くのお客様の大切な時に関われるように、接客の奥深さと向かいつつ楽しんでいけたらと思います。
偉そうですが、もうひとつ。
ある方に喜んで頂けた接客が、別の方にも同じように喜んで頂けるとは限らないんですよね~。
でも、心からの笑顔はきっと伝わるものがあると思います。自己反省も込めて、今日も笑顔で!!!

Vol.065

目線を上げると・・・新入社員花一輪

のん太鮨防府店 F.M

入社から1ヵ月半が立ちました。
2週間の研修期間を経て、のん太鮨防府店に配属が決まり1ヶ月。
現実の厳しさを日々痛感しております。
幾度となく挫折してしまいそうな時、沢山の方々に支えられ、励まされ、日々乗り越える源をいただき感謝の気持ちでいっぱいです。

お客様との関わりを中心とした仕事は、とても難しいものだと実感しております。
お客様には色々な方々がおられ、厳しいお言葉を頂いたこともあります。
その都度、現実から逃げ出したくもなります。
しかしそんな時に、竹内トレーナーから言われ続けてきた、「目線を上げる」ことを心掛けています。

そんなある日のこと、おひとりのお客様が来店され、他のお客様が後から来られるということで、店内のウエイティング席に座ってお待ちになられました。
私は、お客様が少し不安そうな顔をされていらっしゃったので“お茶をお出ししたら喜んでいただけるかな”とふと思い、すぐお茶をお出しすると、お客様は笑顔になられ、喜んで頂きました。
素直に嬉しかったですね。
この時、配属して間もない時でしたから、嬉しかったと同時に、ほっとした気持ちになりました。

この体験が最初の一歩となり、「目線を上げる」ということが、お客様に感動を与える接客に繋がる一つの方法だと改めて実感しました。
ご来店されたお客様が、お帰りの時、『おいしかった!』『ごちそう様!』『お腹いっぱい!』などと、お声を掛けて下さることが沢山あります。どんなことよりも嬉しい瞬間です。
一つ一つのどんなに些細お言葉でも、励みになったり、勉強になったりしております。
これからも、もっともっと色々な体験をしていくと思います。
どんな状況であったとしても、絶対に「目線を上げる」こと、そして、「お客様の立場に立って物事を考える」ことは忘れてはいけません。

今トレーナーのハンカチを、頑張るお守りとして常に握り締めて仕事をしています。
このハンカチには、綺麗なお花が描かれています。しかし、今は悔し涙に染まって元気がありません。
だから、これから、沢山の経験をし、大きく成長し、感動の涙で、綺麗なお花を元気いっぱいに咲かせ続けたいです。